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「大丈夫、新月は、僕とシオンはまだやれる!」
アズは操縦桿を前に倒し、中央のフットペダルを強く踏んだ。
眉間に思考波を集めた。
新月号のクチバシがギリギリとコンクリートに食い込むと、翼に残っていた僅かのラムダは制御室の外壁にしみ込む。
太陽の翼の最後の斥力。
壁をこじ開けた新月は棟内深くへ首を入れ、キャノピーが油圧シリンダーの力で開くと広い室内に残っていた7人のF体はそれぞれのコアシートから立ち上がった。
「みんな、よーいドンでコクピットへ飛び乗って。いいかい、合図をしたら一斉に走るんだ」
新月に残された力は、非常用のバッテリーから得られる電力のみである。
《ナチュラル、力を貸そうか?》
「誰?」
海からの風が運んで来た言葉。
《ラムダとでも言っておかこうか?》
「結構よ。新月はまだ飛べるもの」
アズの後ろで、シオンが言った。
「へへ」
アズは何だか笑えてきた。
言いたい事は、シオンが先に答えてしまった。
「みんないくよ。よーいドン!」
みんなみんな走ってくる。
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