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地球ってのはさ、丸くって広くって大きくて。
だからガギガギの塔が倒れちゃったのを、半年のちまで知らない人は沢山いるはず。
すぐさまそれを知りえる人もいるけれど、その人達が別段偉い訳でも優れているわけでもない。
ただその事象に、近い位置にいただけである。
異能体と新物質の関係も、大体はそんな感じかもしれない。
新月号が麓の町を目指している頃、イアーノウが1つしかない島の波打ち際では、何時までもプロポーズの言葉を言えない青年に、幼馴染の女性が腕を広げた。
青年が何時も困った時に見せる、眉間の皺がくすぐったくて。
「言葉なんか要らないわよ」
青年の肩から力が抜けた。
求婚の証、ピンクの貝殻のネックレスをようやく前に出した。
東海岸近くの朝市では、花売りの女の子がヒョイと立ち上がり、それをすまなそうに見ている油だらけの作業着の男に近付いた。
小さな黄色い花を持っている。
男は戸惑った。
「あ、あのね‥今日はお金がないんだよ」
女の子は勿論、そう勿論、首を振った。
──小さな黄色い花を、黙って差し出した──
「シオン‥‥あのさぁ‥‥‥」
ぎゅうぎゅう詰めの新月号のコクピットである。
「ううん‥‥言わなくていいわ、アズ」
シオンの白い腕が、シート越しにアズをやわらかく抱いた。
END
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