空飛ぶドングリ

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  「おお、おお。新入りさんは日本人だって?」 厨房から出て来た料理長は、ふくよかな腹をした白い髭。 その白い顎髭をゆらして、満足そうに笑っている。 「これで人手不足も解消だ。ハッハッハ。ガンガン働いてもらわないとな」 シオンの顔を見ているところからすると、彼女にあてがわれた仕事場はここらしい。 3人の女の子は食事を終え、1番手前に居た女の子は料理長に挨拶をして食堂を出て、真ん中に座っていた子は、ロマァの他に、アズとシオンにも微笑み掛けた後、小走りでドアに向かった。 最後に残ったリボンはというと、ロマァの前まで来ると、かれの靴の爪先をぐいぐいと小さな足で踏んだ。 「止めろよリボン‥‥」 そんな事をされながらも、小柄な黒ぶち眼鏡の顔は優しい。 「明日、ケーキ屋でアップルパイを買って来よう。お昼の休憩に2人だけで頂くとしよう」 リボンはぐいぐいを続けながら、暫く何かを考えていたが、ぐいぐいを止めると無言で食堂のドアに向かった。 その背中を見送るロマァの表情は、変わる事のない、優しい顔である。  
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