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「リボンは相変わらずだな。お前がこの2人の世話を焼いているのが嫌なのだろう」
「ですね」
ロマァは1番近いテーブルの椅子を引き、そこへシオンを座らせた。
料理長は椅子に座ったシオンに対して、丸い体をくの字に曲げた。
「お嬢ちゃん、ジャガイモの皮は剥けるかい?」
「‥‥‥」
「パンは焼ける?」
「‥‥‥」
料理長は、別段の反応をしないでくるりと回った。
アズとシオン、それからロマァの食事を作りに行くのだろう
ゆったりとした料理長の動きとは反対に、アズはバタバタとシオンの正面の椅子に座った。
「嘘よシオン! ジャガイモの皮、剥けないの?」
「‥‥‥」
「パン、焼けないの? 知らなかった!」
「‥‥」
「はっはっは」
厨房の中で料理長は笑った。
「わしにも、ジャガイモの皮を剥けない時はあった。パンをそれなりに焼けるようになったのは、女房と結婚した後だ」
カチャカチャと音がした後、ジャジャーと何かを炒める音がし出した。
美味しい何かの香りがホールに満ちて、ロマァは満足顔で、若い日本人2人のテーブルに同席した。
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