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テーブルに運ばれて来たのは透明なスープと少し固そうなパンである。
料理長は既に仕込みを終えているらしい。
3人が食事を始めると、葡萄酒の瓶とグラスを2つ持って、彼等のテーブルに座った。
「日本はかつて木星を目指したろう?」
料理長はロマァの前にもグラスを置き、コルク抜きをクルクルと回す。
「太陽の翼計画ですね」
2つのグラスに、葡萄酒はゆらゆらと注がれる。
「大分お金を使ったんでしょう? キランからもサフスからも相手にされなかった位ですからね」
ロマァはお酒が好きらしい。
グラスにつけた唇と一緒に、眼鏡の奥の目まで細めている。
「違うな、日本がどちらの相手もしなかったのさ」
アズとシオンは大人2人の話をよそに、黙々と食事を続けている。
「アルミナの手紙によく書かれていたのは、ヤナギ‥それからタニグチ‥同期生の日本人の名だったが〈世界のワガママ〉を無事に切り抜けられたかどうだか」
もぐもぐもぐ。
アズは固いパンの最後の一切れを、口に放り込んだ。
「太陽の翼‥新月号でしたよね? サフスは未だに指すらも触れられないらしいです」
もぐもぐもぐ。
シオンも最後の一切れを、口に入れた。
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