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大人2人は、2本目の葡萄酒の詮を抜いた。
「シオン、帰ろう」
空の食器を重ねたアズは立ち上がると、それを持って厨房へ歩いた。
ガチャガチャと音が聞こえるから、食器を洗い出したようだ。
「そうだ、お嬢ちゃん達の名前を聞いてなかったね」
料理長は新たにグラスへ注がれた葡萄酒に口をつけ、ついでに白い髭にも滴をつける。
「タニグチ・シオンです」
「タニグチ‥‥」
食器を洗い終えたアズは厨房から出てきて、今、食べ終えた食事のツケを小首を傾げている料理長に頼んだ。
「お嬢ちゃんは、明日から此処で働く。食事は賄い飯だ、金は要らない」
「そうですか‥‥助かります」
「そして、まさかだと思うが君の名は?」
料理長が髭の滴を手の甲で拭うと、飛行母船ドゴンゴの中に、甲高いベルの音が鳴り響いた。
芯をくり貫かれたパイナップルの空洞に、上から順序良く鐘の音が伝わる。
「なんれすかね?」
ロマァは酒好きだが酒に弱い。
「ジャゲポーが近くを飛んでいたそうだ。縄張り荒らしだろう」
立ち上がった料理長に、アズはぼそりと先程の問いの返事をした。
「ヤナギですよ」
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