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「総員警戒体制だ──」
吹き抜けを駆け下りながら誰も彼も叫んでいる。
「さてさて、ようやく仕込みが終わったというのに別仕事か」
料理長は立ち上がり、壁に掛けられていた上着を羽織った。
非常事態にはおそらく、手の空いた者は防空や消火の役目を担うのだろう。
「ロマァさん、縄張り荒らしって?」
アズは尋ねたのだけれども、ロマァは白木のテーブルに上体を伏せて、口だけを動かして葡萄酒をすすっている。
「毎年11月に、空賊の縄張り決めのイベントがあるろれ。11ヶ月の間は、空賊の飛行母船はそこで決められら場所からは出れらいのさ。でも今は10月らろう、縄張りを飛び越して飛んでも良いろさ」
何だか解らないけど、おそらくこう。
空賊達は、年に1度のイベントを開き、それの順位で縄張りを決めているらしい。
けれども、次のイベントが開かれる前の1ケ月間は、実力でテリトリーの拡張が出来るらしい。
「おいロマァ、イエロラを出すぞ!」
食堂のドアを勢い良く開けたのは、毛皮の袖無しガジャラである。
鼻の穴を広げているガジャラを、ロマァは頭の上に星をくるくるさせて見ている。
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