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《馬鹿野郎! 俺から離れるんじゃねぇ!》
《ガジャラさんを待ってたら、ジャーンさんが落とされちゃう!》
アズの3番機は翼をV字に絞ると、右への回転をしながら、内燃機関に対しては異次元とも言える加速にはいる。
新物質の斥力を応用して、コクピットの中の体にかかる圧力は軽減しているのだが、限度がある。
「‥‥アズ‥‥吐きそう‥‥」
「気にしなくて良いよ。後で僕が掃除する」
イエロラの推力、第1物質クリルの斥力に、第3物質ラムダの斥力が覆い被さる。
「いた、オカルト!」
アズは操縦桿を左斜め前に倒し、右のフッドペダルを目一杯に踏む。
3番機のコクピットの中に、透明で生温い吐瀉物が浮遊するが、少年は気にも留めない。
「シオンは安定した思考波を保つ事だけして! 後の加減は僕がやる!」
オカルトの翼長は40mを超える。
その黒い怪鳥の鼻先を、アズのV字が斜め上からギリギリの間隔で掠め落ちる。
「コイツ!」
アズは感じた。
《無茶をするな! アズ!》
ジャーンの思考波。
「シオン、踏ん張って! このオカルト‥ロブロ・ゼッタを堕とした奴だ!」
アズは操縦桿を、胸に引き付けた。
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