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人々が斥力(せきりょく)の恩恵を受けて50年が過ぎる。
古くは暗黒物質と呼ばれたそれは、意外にも地表の直ぐ下にあった。
既知の物質が、電磁波を発して可視であり引き合う力を持つのに対し、目には見えずに物を遠ざける力を持つ。
力は存在するのだけれども、物質そのモノは、この宇宙とは次元の異なる別宇宙にある。
「ローズマリーの心臓は第1物質クリル。単純性能だけでもオカルトの第2物質アコーサには勝てないよ」
三本町に行くには、この辺りで1番高い山を越える。
アズは排気音のうるさい単気筒を、その山の頂上付近で休めた。
茜色の余韻の向こう、稲刈りをとうに終えた田んぼ群の中から昇る、一筋の白い煙が東の方へ流されている。
「あのね、バイクに乗りながら話されても、何喋ってるのか解りませんからマニア君」
シオンの頬は泥で汚れている。
アズはその顔を上着の袖でぐいぐいと拭いた。
「可愛顔が台無しだよ」
「ゆ、ゆるす‥‥」
何を許されたのだろう?
言葉が短すぎて分からない。
「よし! じゃあシオン、Z作戦に協力してもらう」
アズ、それはおそらく間違った解釈‥‥
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