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「シオンごめんね。もうちょっとだけ頑張って」
オカルトから鉛玉が飛んで来たけど無視。
アズのイエロラは、両脚を目一杯前に出して、斥力を溜めたオカルトの上段の翼を再び掴んだ。
そのまま推力を維持して、メリメリと羽根を引き千切った。
「アズ‥‥限界‥‥ゲフッ‥」
操縦桿を胸に引き付け、左足のペダルを踏み込んだアズは、後ろのコアシートへ顔を向けた。
「アップルパイは2枚。1枚づつ美味しく食べよう」
「ケプ」
少しだけ驚いて、少しだけ機首を下げたオカルトに、アズは三度突っ込んだ。
オカルトから飛来した最後の鉛玉が胴体に食い込んだけれども、3番機は怯まない。
オカルトに正面から当たり、右の主翼にがっしりと爪を立てた。
「ラムダ、限界までの力を捻り出せ!」
アズは、両手で操縦桿を引いた。
小さいイエロラを中心にして、大型のオカルトが回転をする。
《アズ、無茶をするな! 堕ちるぞ!》
《落としてんだから、そうなる!》
ジャーンの1番機は、地面スレスレまでもつれて落ちる2つの翼を追ったが、その2つの翼が月夜に砂塵を舞い上げると、静かに首を上げた。
風の無い夜だから、砂塵は何時までも何時までも視界を遮り、アルミナ・ジャーンは困ったように、空に弧を描いた。
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