キランの人々

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  ギシギシ、メシメシ。 ジャーン空挺団の母船ドゴンゴ。 基本は木製であるから、気流の変化とか船の加速の度に木材の軋む音がする。 アズが寝ているのは、居住区の丁度中間の階である。 床は斜めだけれども、白いシーツのふかふかのベッドは水平。 頭のすぐ横に窓があり、昼前の太陽の光はレースのカーテンをひょろりと潜って、ベッドの脇のスニーカーを照らし、シオンがだらしなく脱ぎ捨てた上着を照らしている。 今日、最初の来訪者はイエロラ乗りのパイロット、ガジャラであった。パートナーのF体サファイアを連れて来た。 バナナを沢山持って来てくれて、ガガガガ何だか色々喋って帰って行った。 ──コンコン── 今度のノックの音は小さい。 キキッっと開けたドアから、ロマァが顔を半分だけ出した。 「アズ、起きてるかい?」 「起きてますよ」 「怒ってる?」 「え、何でです? 怒ってなんかいませんよ」 「入っても良いかい?」 「どうぞ」 ロマァは背中を丸めて、玄関に入った。 右手に抱えた紙袋から、バナナが黄色くはみ出している。  
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