キランの人々

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  ──コンコン── ロマァがアズのベッドに座ると、今日3回めのノックの音。 「アズ、入るぞ」 返事を待たずに入って来たのは、ジャーンである。 彼女もまた、紙袋を抱えている。 袋の先から、またまたバナナが顔を出している。 「何だロマァ、居たのか。ほらアズ、見舞いだ」 「ありがとうございます。けど‥‥」 「けど何だ?」 アズの言いたい事は大体わかる。 「ドゴンゴの人達って、バナナが好きなんですね」 ジャーンは暫く黙った後で、笑った。 「ハハハハ。先日寄った市場がシミッタレでな、八百屋の親父がバナナしか仕入れられなかっただけだ」 ジャーンは丸いテーブルの上の2つの紙袋を見て、更に笑った。 「何だコレは。ドゴンゴ中のバナナがこの部屋にあるじゃないか? 皆、芸が無いねぇ」 あんたもね。 「ところでアズ、具合は?」 「良いですよ」 「そうかい」 ジャーンは窓の外を見ているロマァの横に顔をつき出して、同じように外を見た。 「こっちの具合は良くないねぇ」 なるほど、先ほどより高度が落ちている。 「アズ、頼みがある」 アズはベッドの上で上体をひねり、3人は顔を並べた。 小さな窓の外を、黒ぶちの丸眼鏡と、色っぽいソバージュと、ぐるぐるの包帯頭が覗いている。 「良いですよ。ドゴンゴの飛行に協力します。その代わりですね」 「ふん?」 「このバナナ、皆に配って良いですかね?」 「フン、好きにしな」 アルミナ・ジャーンはまた笑った。  
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