97人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
──コンコン──
ロマァがアズのベッドに座ると、今日3回めのノックの音。
「アズ、入るぞ」
返事を待たずに入って来たのは、ジャーンである。
彼女もまた、紙袋を抱えている。
袋の先から、またまたバナナが顔を出している。
「何だロマァ、居たのか。ほらアズ、見舞いだ」
「ありがとうございます。けど‥‥」
「けど何だ?」
アズの言いたい事は大体わかる。
「ドゴンゴの人達って、バナナが好きなんですね」
ジャーンは暫く黙った後で、笑った。
「ハハハハ。先日寄った市場がシミッタレでな、八百屋の親父がバナナしか仕入れられなかっただけだ」
ジャーンは丸いテーブルの上の2つの紙袋を見て、更に笑った。
「何だコレは。ドゴンゴ中のバナナがこの部屋にあるじゃないか? 皆、芸が無いねぇ」
あんたもね。
「ところでアズ、具合は?」
「良いですよ」
「そうかい」
ジャーンは窓の外を見ているロマァの横に顔をつき出して、同じように外を見た。
「こっちの具合は良くないねぇ」
なるほど、先ほどより高度が落ちている。
「アズ、頼みがある」
アズはベッドの上で上体をひねり、3人は顔を並べた。
小さな窓の外を、黒ぶちの丸眼鏡と、色っぽいソバージュと、ぐるぐるの包帯頭が覗いている。
「良いですよ。ドゴンゴの飛行に協力します。その代わりですね」
「ふん?」
「このバナナ、皆に配って良いですかね?」
「フン、好きにしな」
アルミナ・ジャーンはまた笑った。
最初のコメントを投稿しよう!