キランの人々

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  15年前の出来事。 〈世界のワガママ〉については多少触れた。 西のサフス連合と東のキラン共和国、世界を二分する国家群のいざこざである。 二つの集団は競う様に高い塔の建設に着手していた。 名前はそのまま、サフスタワーとキランタワーである。 より高い所から、より強烈な思考波を地球の隅々へ飛ばす。 思考波。 間違った使い方をすれば、弱い意思を押しのけて、それを受けた人々を洗脳する事も可能だ。 サフスに比べてキランは財力で劣っていた。 おまけに突貫工事による間違いから、キランタワーは雲に届く高さまで行った時に、地中深く埋め込んだ杭ごと、大地を揺さぶる振動を残して崩れてしまった。 キランの首脳部の頭は、真っ白になったのだろう。 バランスの取れなくなった世界を、サフスタワーを消し去ることで安定させる道を選んだ。 所属不明の人工衛星を見つけると、それがキランの首都に落下すると言い出した。 第1物質クリルは大地から採取するが、第2物質アコーサは宇宙の投網で手に入れる。 所属不明の人工衛星は、おそらくアコーサを満載していると言い張った。 キランの首脳部は、偶然という言葉を、隠れ蓑にして使おうとした。 いけない行為だった。  
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