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女の子達に手を振られているアズを、アルミナ・ジャーンはチラリとだけ見た。
カツカツと踵を鳴らして木製のスロープを上る。
「君は結局ナチュラルなのかい?」
ジャーンの背中を追い掛けているアズを、ロマァの疑問が追い掛けた。
アズは、残ったバナナの袋ひとつを前に抱えて、しばらく考えた。
「正直に言いますよ。シオンも僕もラムダを扱えるし、イアーノウが無くても思考波を飛ばせる。新物質を溶かしたプールに毎日浸かるという事はないからF体とは違うけど、どこまで違うのかは分からないですよ。ノーマルの人たちだって、無意識に感情を他人に伝えられる時がある」
食堂の前に差し掛かると、食事の順番待ちの列が道を塞いでいる。
アルミナ・ジャーンはホクロのある顎を少しだけ上げ、細身のサーベルをぶらぶらとさせ、歩く速度は変えない。
「ジャーン様だ」
そんな声が聞こえたかと思うと、順番待ちの列はざわざわと塞いでいた道をあけた。
ジャーンは先ほどまでとは違い、何かに怒っている様な顔をしている。
(作っている表情‥‥)
アズにはそれが分かったから、不機嫌顔の女の後ろを、バナナの袋を抱え、スタスタと付いて歩いた。
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