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「おっ、陸地が見えて来た」
茶色いバンタナはコーヒーカップを手にしたまま、大きく開かれた格納庫の扉から外を見ている。
「本当かよ!」
他のメカニック達もそこに駆け寄り、冷たい風に上着の裾をバタつかせながら手摺に寄りかかった。
アズとシオンもそれを真似た。
眼下には白い波が打ち寄せる海岸線があり、遠くにはこれもまた白く連なる高い山々が見える。
「イベントが無事に終われば里帰りだ」
赤鼻のメカニックは顔をほころばせ、
「ダッホイで買うのは、やっぱり首飾りにしよう」
アズの隣に立っているストンコ・ウーは、恋人への土産を青い石の散りばめられた装飾具にすることを決めた。
「あれれ、ジャゲポーの母船も飛んでやがる」
手摺から身を乗り出した赤い帽子は慌てたが、茶色いバンタナは冷静にジャゲポーとは逆の西の空を見ている。
「イベント期間は不戦期間さ」
西の大地の上には、ドーナッツ型の飛行母船も飛んでいる。
「さてと、高度が下がって来ちゃった」
アズはコーヒーを喉に押し込んで、空になったカップをシオンに渡した。
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