人任せは風任せ

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  「ジャゲポー殿、公務が済みました以上は無駄話は無用。ジャゲポーに貸与したオカルトの所在も確認しましたから帰ります」 OB会のポンコツイエロラのコクピット、狐顔の女。 「ラスカ・ラスカだ。気をつけろ」 ドン・ジャゲポーは椅子から立ち上がると、アルミナ・ジャーンに小声で告げた。 格納庫の中央には、着艦用アーム等を支える太いセンターポールがある。 その根元の部分には何やら古い機械の数々が、埃を被った姿で積み上げられている。 テレビやパソコンもある。 半世紀前の生活必需品。 思考波の発見でガラクタになった「文明の力」である。 思考波は映像を直接ヒトの脳に投影する。 テレビは要らなくなる。 悪意の思考波は、キーボードを叩くヒトの脳から暗証番号等を盗むからインターネットのセキュリティは崩壊する。 インターネットの消滅。 思考波と新物質の発見は、人々の日常生活まで一変させた。 例えるなら、前を向いて歩いている人々に右向け右を2回強要して、後ろ向きに歩くよう催促した。 ドン・ジャゲポーのイエロラが、アームにぶら下げられながら格納庫を離れる。 「ジャーンさん、あの‥‥あのね‥」 発艦体勢のポンコツを見送りながらアズが言った。 「無理に言おうとしているなら、聞かないぞ」 アルミナ・ジャーンが柔らかく言ったので、アズは続きの言葉を胸に戻した。  
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