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『だめだ、明らかに軌道がズレている。貫太郎、行けるか?』
ブレーンシップのコクピットの中である。操縦桿の前のパネルには、様々な情報が写し出されている。
『雪也、もう少し待て。大気圏外航行用にプログラムを変えている』
『落下予測位置がサフスタワーから離れて行く。サフスが斥力砲を使ったようだ』
ザ───ッ
ザ───ッ
『待たせた、行ける!』
ザ───ッ
//////キラン第2の都市。ダッホイの昼である。
アズは煉瓦造りのアパートの1室でベッドに横になり、額の上に銀色のブレスレットを乗せている。
「いつもここまでさ、データの残量はまだあるのに〈新月〉は羽ばたかない‥‥」
カチャ カチャ
小さなキッチンの中では、シオンが薪を燃やして目玉焼きを焼いている。
煙に乗った香ばしい目玉焼きの香りが部屋に満ちている。
その香りに納得するとアズは上体を起こし、ブレスレットの中の父の記憶から出た。
「先ずはヒゲ将軍を探すところからよね」
シオンが焼いた目玉焼きは2つづつ。
窓際のテーブルには、硝子のコップに入れられたミルクと皿の上の丸いパン。
「そうさ、先ずはそこから」
アズはベッドに腰掛けて、スニーカーの紐を結んだ。
何時もより、キツめに結んだ。
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