ヒゲ中将とラスカ・ラスカ

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  コンコン アズが窓際のテーブルでミルクを飲み干そうかという時、アパートのペンキの禿げたドアを叩く者がいる。 スタスタスタとシオンは玄関に向かい、アズはその姿をミルクのグラスに口をつけたまま目で追った。 「やあシオンちゃんお久し振り、珍しいことがあったもんだよ。アズは居るかい?」 陽気な言葉の主はロマァだった。 黒縁メガネのクリクリ頭を、ドアの隙間に入れている。 「ロマァさん、どうしたんです?」 グラスから離したアズの口にはミルクの輪っか。 「ジャーンさんが君ら2人に軍資金をくれたのさ。20万キランだぜ。ねぇねぇ、何を買う?」 20万キランとは大金だが、アパート代やら食事代、ヒゲ中将がもしダッホイから移動をするならそれも追わなければならない。 「手始めに護身用のピストルなんて買っちゃう?」 パイロット・ロマァ。物騒な事を言う。 「やだなぁロマァさん、僕とシオンにはラムダナイフがあるんだよ、ピストルなんて──」 ミルクのグラスを持って立ち上がったアズの言葉に、シオンが言葉を重ねた。 「そう、ピストルなんか持ってるから、無駄遣いは駄目よ」 言いながら彼女がエプロンのポケットから取り出したのは、鈍く光る旧式のセミオートマ。 「え───っ!」 「ちょちょ、シオンちゃん!」 アズはミルクのグラスを落とすし、ロマァは玄関横の花瓶を倒すし‥  
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