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引き返して来た自転車の男の子は、笑顔でアズから帽子を受け取り、笑顔のままUターンをして人の波を掻き分けて行く。
「この人達の中に、他の空賊団の代表も居るかも知れないのね」
シオンがしゃがみ込んで手にしているのは、木を削って作られた素朴なネックレス。
「居るかもしれないけど居ないかも知れない」
ロマァはアズとシオンの間に立って、道行く人々を見渡した。
「正直、今年のお題は難しいよ。弱小の空賊団のほとんどがイベントへの参加を辞退したらしい。聞くところによると、イベントに参加したのは、ウチを含めてたったの4団体だそうだ」
「けどさぁ、ダッホイのあめ玉って美味しいね」
アズは、ツナギの上に着ているダウンコートのポケットから、2つ目のあめ玉を取り出した。
「ヒゲ中将に〈参った〉と言わせたら3位。これ位ならなんとかなる」
取り出したあめ玉はオレンジ色。
「ヒゲ中将のお宝の懐中時計を盗んだら2位。これもギリギリ可能かも知れない」
アズはそのオレンジのあめ玉を、ロマァに渡した。
「問題は1位の条件、ヒゲ中将のヒゲを剃る‥‥だ」
アズはシオンへもあめ玉を渡した。
「ヒゲって言ってもイロイロあるじゃん? 口ヒゲだったらみぎひだり、顎ヒゲまであったらどうするの? 全部剃らなきゃだめ?」
「右の口ヒゲだけで良いだろう」
「ふうん」
アズは緑色のマスカットキャンディーを、口に入れた。
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