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パン、パン───
「撃ち過ぎだ! 誰かに当たったらどうするのさ」
アズは駆けながら、ツナギのポケットからラムダナイフを取り出した。
最も緑色の髪に近い男が屋根の上で立ち止まり銃を構えた。
「だから撃ち過ぎだっての!」
アズは大きな買い物袋を抱えたおばさん2人の間をすり抜けながら、目立たないようにラムダナイフを構え、その灰色に思考波を送った。
思考波は外宇宙とこの宇宙の隙間を伝う。
外宇宙と言っても我々の宇宙を取り巻いている訳ではない。
平たく言えば重なっている。
「上手に落ちなよ」
灰色が鈍く光ると、ラムダの斥力は空間の間(はざま)を伝う。
男の足元のスレートが6、7枚剥がれて男の足をすくう。
フワリとした落下。
「次!」
アズはステッキを手にしたベレー帽の紳士を交わして走り、クルリと灰色を回す。
宙のスレートは飛んで、後続の男達を掠め、そのバランスを崩す。
《誰?》
アズは漸く緑色の少女がいる屋根下にたどり着いた。
少女は足を止め、下を見ている。
《君こそ誰さ?》
嗅いだ事のある鉄の匂い。
《E‥‥いや、クロッカス》
少女は再び駆け出した。
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