ヒゲ中将とラスカ・ラスカ

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  「ヒゲ将軍、ギルネ・ザザってさ、どんな人?」 膝に頭を乗せている。 アズの問いは温かい振動で少女の耳に伝わる。 「‥‥頭の良い人よ〈世界のワガママ〉の後、人を出来るだけ傷つけないようにしながら、サフスタワーの完全稼働を遅らせて来た人」 「君、キランの人だよね」 「そうよ」 暗いコンクリートの壁に、2人の声だけ響く。 「さっきさ、軍の人達の声を聞いたんだ。クーデターとか言ってた」 「‥‥」 「そっか、ギルネ・ザザって人は悪い奴じゃないんだ」 頷くアズの膝を離れて、クロッカスは立ち上がった。 「キランはどうしても貧しいのよ。貧しさはワガママを生むし‥‥私達を作った‥」 「えっ?」 カタン 上の方で音がした。 丸い穴から藍色の光が落ちて来た。 「おい、EE。いるんでしょ?」 男の子の声である。 「いるわ」 藍色を浴びて緑色の髪は答えた。 「ホテルに帰るよ。お腹空いちゃったよ」 「クスッ、バレちゃったわね‥アズ。あの子、私のパートナー。アルフレッド・ジャゲポーよ。貴方と同じナチュラル。次は負けないわ」 クロッカス、いやEEは壁のタラップに手を掛けた。 「知ってたよ‥別にクロッカスで良いじゃん」 アズも夜の藍色を浴びて笑った。  
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