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「ダメじゃないか! こんなに長い時間アコーサの溶液からはなれちゃ!」
上の穴からアルフレッドの優しい叱り声が聞こえる。
(アコーサの溶液なんて初めて聞いた‥‥)
アズはマンホールの穴を見上げたままである。
「さっきの人、誰なんだい?」
「私のオカルトを落とした人」
「え~っ、本当に~」
靴音と話声は遠ざかってゆく。
(アルフレッド・ジャゲポーねぇ、暗くて良く分かんなかったけど、ドン・ジャゲポーの孫かな? ひ孫? それとも‥息子?)
おいアズ、クロッカスはアルフレッドの事をナチュラルって言ってたんだよ。
「息子だね‥‥」
決めつける。
「こらアズ! 心配掛けないでよ!」
今度の声は聞き覚えがある。
シオンだ。
「怒んないでよ。僕なりに一生懸命だったんだから」
アズもタラップに足を掛けて上に向かった。
体半分を地上に出した所でシオンに抱きつかれた。
「心配したんだからね‥」
シオンの髪もアズの鼻をくすぐる。
「こらアズ!」
また怒る。
「そこですれ違った女の子の香りがする!」
「ああ、クロッカスだよ」
アズはEEとは言わない。
「そう‥‥」
シオンもアズの胸におでこをゴシゴシさせているだけで、それ以上は言わない。
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