第1話 黒き麒麟

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  あの少年が嫌がっていても力なく引き剥がされたのに、麟の話を聞いていたのか暴れだし、死んだ可能性のある男性の前にたちはだかり、威嚇をしていた。 何か違和感を感じた麟は、皆に敢えて引くよう伝え、 「驚いたな、どれ、私が代わりに少年を退けよう」 自ら少年を退けると言い、近付いた時だ。 まさか少年から邪気が出てきて、 「……ディダに、ディダに……ディダに近付くな!」 ここの言葉で、男性の名だろう名前を言ったかと思えば、邪気のせいで我を忘れて、麟に襲い掛かった。 無論、麟からすれば、 「哀れな子供よ、神に歯向かった事を後悔せよ」 どんな理由にせよ、神である麟に歯向かえば、死ぬより恐ろしい罰が待っている。 諦めるかと、振り向けば、怯えるかよの姿があった。 邪気のせいなのかと思ったが、明らかに麟が少年を殺すかも知れない恐怖で怯えていた。 この瞬間、総十は心の葛藤があった。 過去に助けられなかった事を思い出し、 『何もしないで、見捨てるのか。それじゃ何も出来なかった昔の俺じゃないか!』 そう思ったら、いてもいられなくなって、 「洒落臭せい!」 麟と少年が接触し戦う瞬間、総十が間に割り込んで、呪で少年を吹き飛ばしたかと思えば、今度は両袖から大量の札を取り出し、少年に投げ付けた。 少年もさすがに逃げようとしたが、札が少年の体に貼り付き、最終的に動けなくした。 そのお陰か少年から邪気が消え、麟も、 「驚いた、総十が私を出し抜いて呪を掛けおった」 驚いてはいるが、内心ホッとした声だった。 別に少年は要らなかったが、 「うるせぇっよ。このガキ俺に寄越せ」 また争われたり、邪気を飛ばしたりしたら困るので、とりあえず少年を寄越すよう頼んだ。 麟は、別に構わないと、 「構わん、好きなようにしろ」 そう言って、本題である死んだ可能性のある男性に近付いていった。  
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