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あの少年が嫌がっていても力なく引き剥がされたのに、麟の話を聞いていたのか暴れだし、死んだ可能性のある男性の前にたちはだかり、威嚇をしていた。
何か違和感を感じた麟は、皆に敢えて引くよう伝え、
「驚いたな、どれ、私が代わりに少年を退けよう」
自ら少年を退けると言い、近付いた時だ。
まさか少年から邪気が出てきて、
「……ディダに、ディダに……ディダに近付くな!」
ここの言葉で、男性の名だろう名前を言ったかと思えば、邪気のせいで我を忘れて、麟に襲い掛かった。
無論、麟からすれば、
「哀れな子供よ、神に歯向かった事を後悔せよ」
どんな理由にせよ、神である麟に歯向かえば、死ぬより恐ろしい罰が待っている。
諦めるかと、振り向けば、怯えるかよの姿があった。
邪気のせいなのかと思ったが、明らかに麟が少年を殺すかも知れない恐怖で怯えていた。
この瞬間、総十は心の葛藤があった。
過去に助けられなかった事を思い出し、
『何もしないで、見捨てるのか。それじゃ何も出来なかった昔の俺じゃないか!』
そう思ったら、いてもいられなくなって、
「洒落臭せい!」
麟と少年が接触し戦う瞬間、総十が間に割り込んで、呪で少年を吹き飛ばしたかと思えば、今度は両袖から大量の札を取り出し、少年に投げ付けた。
少年もさすがに逃げようとしたが、札が少年の体に貼り付き、最終的に動けなくした。
そのお陰か少年から邪気が消え、麟も、
「驚いた、総十が私を出し抜いて呪を掛けおった」
驚いてはいるが、内心ホッとした声だった。
別に少年は要らなかったが、
「うるせぇっよ。このガキ俺に寄越せ」
また争われたり、邪気を飛ばしたりしたら困るので、とりあえず少年を寄越すよう頼んだ。
麟は、別に構わないと、
「構わん、好きなようにしろ」
そう言って、本題である死んだ可能性のある男性に近付いていった。
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