32人が本棚に入れています
本棚に追加
麟の動きが止まった。
しかも止まっただけじゃない。
殺意を感じだ。
生まれて始めて感じる神の殺意は、あまり感じなくなった絶望と恐怖、そして憤怒を呼び起こし、周りも気が狂い出して、殴り合いが始まってしまうほどだ。
「確かに、少年が近付くなの意味に同意だ。
こいつのせいで、母様を殺されたも当然だからな!」
麟の言葉に総十は、昨日の言葉を思い出し、
『そうか、成る程な、まさか、麟が怒れる相手がこの少年の連れか!
ちくしょうが、動けない!
周りも理性を忘れだしている、このままじゃヤバい!!』
分かっても、足が動かないし、周りも混乱、麟に至っては、無理からぬ事だが、この状況を理解出来ていない。
少年なんかは、札で口を塞がれ、もがいているが、きっとまた男の名を叫んでいた。
止めに行きたいのに動けない。
また、あの時を少年と自分をダブらせ、向かいたいのに、麟の殺意は人をおかしくさせ、土鬼までも怖がって近付けなかった。
止められないのかと半分諦め掛けた時、かよだけがこの空間を走り、麟の前に立ちはだかった。
「麟様! 例えこの男が麟様の仇でも、かよの前で殺さないでください!
後、後、この男を殺せばきっとあの少年が麟様の気持ちと一緒になります!」
その言葉に麟は、
「なら一緒に殺るか?」
この問いにかよは半分怒って、
「駄目です! それではなんの解決になりません!」
言い放った途端、泣き出し、跪いて動けなくなった。
漸く麟は、我に戻ると、辺りも理性を取り戻し、何があったと言っていた。
麟はかよを抱き締め、
「……大丈夫、悪かったな泣かせて」
謝りながら、袖から札を取り出し、男に投げた。
「おい!」
まさか殺すのかと思えば、
「安心しろ、ただの止血だ。
後、邪気の原因はあれの後ろだ」
止血の為の札だった。
そして麟の言う通り、腐った遺体が転がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!