第1話 黒き麒麟

2/36
前へ
/184ページ
次へ
  血が舞う光景は、何故かゆっくりゆっくり時を刻む。 ディダの体を切る邪刀(じゃとう)、男と邪刀を刃だけとなった聖刀が切り裂き、血が舞う中、男が倒れた。 倒れた直後に時間が戻り、ディダの血が顔に付着し、ディダも倒れた。 周りにも血が飛び交い、ディダから広がる血に青ざめ、 「ディダァァァ!! ディダ、ディダ!!」 すぐに駆け寄り、色んな箇所の傷口よりも、右肩から脇腹に掛けて切られた大きな切り口から、ドクドクと流れ、ディダの口からも、血が出た。 話そうと口を開くディダだが、声を出そうとする度、血が溢れ出す。 「話さないで! すぐに治療しなきゃ……やだ……止まれよ……!! っわぁぁぁぁあぁ!!!!」 服を破き、傷口を縛るが、流れ出す血は夥しく、ディダが死ぬ恐怖に怯え、叫ぶも誰にも聞こえていないと、泣き叫んだ。 古き言い伝え、“この土地に入ってはならぬ、入れば死よりも恐ろしい罰が下る”これは黒き麒麟と呼ばれる神様が、生き物全てを拒否した言葉です。 しかし、時代が黒き麒麟様を動かし、心を変えさせた。 不思議なモノです。 動物も人も変わり者だと笑う事でしょう。 それでも、黒き麒麟様は、微笑むばかりでした。 誰もが頭を傾げる様な話も、つい最近出来たお話で、実際本当かどうか、分かりません。 「――と言う話があったが、一体どんなモノか」 1ヶ月位前、黒き麒麟の噂を聞き、どんなものかと軽はずみだった。 死ぬとかは怖くない。 ただ痛いだけの体より、よっぽど良いものだ。 「もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ」 「煩いぞ、土鬼」 土鬼が興奮しているのは、神が住まう土地はより良い土だと言われ、豊作が約束される。 要するに、土鬼の力の源となる土が良いと言うわけだ。  
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加