第1話 黒き麒麟

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  「ふざけんな!」 1人となったあぶれ者は、男に勝てないと踏み、少女に向かって走り出す。 「きゃっ!」 殺されるのではと、少女が怯え、頭を守る。 「もぎゅぅ!」 いきなり土鬼が地面から飛び出て、残り1人のあぶれ者の腹部を直撃、相当な衝撃で、胃液が飛び、それと同時にあぶれ者も飛んでいった。 「また勝手に出てきやがって! 土鬼、いつも勝手に手柄を取るな!」 怒っているように見えるが、半分飽きれ、 「もぅぎゅぅ」 土鬼に至っては、反省すらしておらず、あぶれ者が気を失っているのを確かめていた。 その土鬼の奇妙な形に少女の目は奪われた。 30㎝位の大きさで、今で言えばアザラシの様な形、手は、モグラの手をしていて、つぶらな瞳に、猫みたいな口を見て、 「可愛い!」 先程の恐怖は何処へやら、目を輝かして、土鬼においで、おいでと手招きしていた。 「えっ……可愛いのか?」 男は、土鬼を見つめていた時だ。 「かよ! かよ! 何処だ!」 女性の声が森中に響き渡り、少女は、 「かよはここです、麟様!」 すぐに誰かなのか理解し、ここだと叫ぶ。 かよの姿を見て、男は、 『かよ……? いや違う、どうして同じ名前の奴は、俺の知っている“かよ”に似ているんだろう』 知っている面影を重ねてしまい、切なくなった。 男はすぐに去ろうと動き出すと、 「動くな」 また先程の女性の声がした。 今度は近くからだ。 辺りを見渡すと、かよの上から、ゆっくりと巫女の姿をした女性が現れ、 「麟様!」 「かよ、心配させるな、薬草くらい、近場の神に交渉出来るんだぞ?」 かよを優しく語りかけていた。 『あれが、黒き麒麟、麟なのか……でも、もう興味は無くなった』 男は、詰まらなそうにもう一度行こうとした。  
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