第1話 黒き麒麟

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  「動くなと言った」 麟がこちらを睨んできた。 普通なら恐怖モノだが、 「動いたら、死ぬより恐ろしい罰を受けさせるのか?」 男にとっては、どうでもいいと言った口ぶりに対し、じっと睨んだまま麟は、男を見た後、周りを見渡し、出せとばかりに叫ぶ声、延びきったあぶれ者に、おかしな生き物を見て、 「アッハッハッ!! 面白い奴だ。 私は麟、この子は、かよだ」 急に笑い出し、麟はわざわざ自己紹介までしてくれた。 しかし男は、 「名乗る気はないね、じゃあな」 興味は無く、さっさと別の場所へ行こうと振り向いた。 「だから動くなと言っている。 はぐれ神に支えし者」 いつの間にか麟は男の前にいた。 「驚かせるなよ」 そう言っているが、一切驚かず、それどころか、邪魔くさいなと言った感じだ。 「驚いていない様に見えるが?」 笑う麟に対し、男は、先の言葉を思い出してか、 「どうして、俺がこいつに支えなきゃいけない?」 そう言っていたら、土鬼が土に潜って、 「もぐゅん」 足元から顔を出した。 麟は屈んで、土鬼を見て、面白いものを見付けた目で、 「変わったはぐれ神だな。 かよを助けた礼がしたい、来なさい」 礼をしたいと言った。 だが、男は、 「大したことはしていないし、助けに来たのは気紛れだ」 礼をされるのが嫌なのか、早々に歩くのだが、いつの間にか、足元にかよがいて、 「ゴツゴツしてると思ったが、凄くフカフカだぁ」 土鬼を触っていた。 しかも土鬼も満更でもなく、 「もっぎゅぎゅぅ」 かよになついていて、抱っこまでさせていた。  
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