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「動くなと言った」
麟がこちらを睨んできた。
普通なら恐怖モノだが、
「動いたら、死ぬより恐ろしい罰を受けさせるのか?」
男にとっては、どうでもいいと言った口ぶりに対し、じっと睨んだまま麟は、男を見た後、周りを見渡し、出せとばかりに叫ぶ声、延びきったあぶれ者に、おかしな生き物を見て、
「アッハッハッ!! 面白い奴だ。
私は麟、この子は、かよだ」
急に笑い出し、麟はわざわざ自己紹介までしてくれた。
しかし男は、
「名乗る気はないね、じゃあな」
興味は無く、さっさと別の場所へ行こうと振り向いた。
「だから動くなと言っている。
はぐれ神に支えし者」
いつの間にか麟は男の前にいた。
「驚かせるなよ」
そう言っているが、一切驚かず、それどころか、邪魔くさいなと言った感じだ。
「驚いていない様に見えるが?」
笑う麟に対し、男は、先の言葉を思い出してか、
「どうして、俺がこいつに支えなきゃいけない?」
そう言っていたら、土鬼が土に潜って、
「もぐゅん」
足元から顔を出した。
麟は屈んで、土鬼を見て、面白いものを見付けた目で、
「変わったはぐれ神だな。
かよを助けた礼がしたい、来なさい」
礼をしたいと言った。
だが、男は、
「大したことはしていないし、助けに来たのは気紛れだ」
礼をされるのが嫌なのか、早々に歩くのだが、いつの間にか、足元にかよがいて、
「ゴツゴツしてると思ったが、凄くフカフカだぁ」
土鬼を触っていた。
しかも土鬼も満更でもなく、
「もっぎゅぎゅぅ」
かよになついていて、抱っこまでさせていた。
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