32人が本棚に入れています
本棚に追加
あまりのなつきっぷりには、麟は大笑いし、
「どうする?」
再度来るかどうかを聞いてきた。
「あぁもぅ! 礼を貰ったら行くからな」
土鬼に対し、男は苛立つも、大人しく一緒に行くことに決めた。
山を越えた辺りで、道が開けたかと思えば、そこは村で、丁度田んぼや畑が緑で埋め尽くされ、ピョコピョコと人間の頭があった。
麟は指差して言った。
「来なさい、緩やかな坂の上に私の社がある」
指差す方向には、緩やかな丘の上に、ここで暮らしている人間達の家々があり、もう少し奥に鳥居があった。
麟が歩き出し、その後を追って歩くと、村人達が麟様と次々に作業の手を止め、麟の元へやってくる。
そうして、集まってきた中に、
「麟様、その者は、頭(かしら)狩りの者です!」
男を知る者がいて、皆が騒然となった。
この不穏な雰囲気に、男はもう行こうかと考えた時だ。
「もしそうなら、かよ等助けず、真っ直ぐ私に土鬼を向かわせるだろう」
土鬼の話はしてはいない筈だが、きっと何処かで見ていたに違いない。
「俺が助けるか見定めてたくせに」
なんとなくタイミングからして分かっていた。
だってあの辺りから麟の土地だからだ。
だが麟は、笑ってこう話す。
「そういうな、神狩りが頻繁で、貴様が頭狩りから神狩りに変えたのかと思っていてな。
思ったより、背が大きいな」
麟もまた、噂は耳にしていた様だ。それでいて、緩やかな丘で丁度目線があった時、
「確かにコイツら男衆よりも1つ頭あるからな」
男の身長はこの時代に似つかわしくない位、身長が高かった。
「もしお前が私を襲っても、死ぬだけだぞ」
「分かってるよ」
神に逆らうほどバカではないと、やる気なく言っていた。
麟は皆に、言った。
「皆、彼への侮辱は許さんぞ! では行くぞ」
それは頭狩りだからとか、殿を殺られたとかで、恐れたり、侮辱を許さないものだ。
皆黙り、道を空け、麟が歩き、その後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!