第1話 黒き麒麟

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  あまりのなつきっぷりには、麟は大笑いし、 「どうする?」 再度来るかどうかを聞いてきた。 「あぁもぅ! 礼を貰ったら行くからな」 土鬼に対し、男は苛立つも、大人しく一緒に行くことに決めた。 山を越えた辺りで、道が開けたかと思えば、そこは村で、丁度田んぼや畑が緑で埋め尽くされ、ピョコピョコと人間の頭があった。 麟は指差して言った。 「来なさい、緩やかな坂の上に私の社がある」 指差す方向には、緩やかな丘の上に、ここで暮らしている人間達の家々があり、もう少し奥に鳥居があった。 麟が歩き出し、その後を追って歩くと、村人達が麟様と次々に作業の手を止め、麟の元へやってくる。 そうして、集まってきた中に、 「麟様、その者は、頭(かしら)狩りの者です!」 男を知る者がいて、皆が騒然となった。 この不穏な雰囲気に、男はもう行こうかと考えた時だ。 「もしそうなら、かよ等助けず、真っ直ぐ私に土鬼を向かわせるだろう」 土鬼の話はしてはいない筈だが、きっと何処かで見ていたに違いない。 「俺が助けるか見定めてたくせに」 なんとなくタイミングからして分かっていた。 だってあの辺りから麟の土地だからだ。 だが麟は、笑ってこう話す。 「そういうな、神狩りが頻繁で、貴様が頭狩りから神狩りに変えたのかと思っていてな。 思ったより、背が大きいな」 麟もまた、噂は耳にしていた様だ。それでいて、緩やかな丘で丁度目線があった時、 「確かにコイツら男衆よりも1つ頭あるからな」 男の身長はこの時代に似つかわしくない位、身長が高かった。 「もしお前が私を襲っても、死ぬだけだぞ」 「分かってるよ」 神に逆らうほどバカではないと、やる気なく言っていた。 麟は皆に、言った。 「皆、彼への侮辱は許さんぞ! では行くぞ」 それは頭狩りだからとか、殿を殺られたとかで、恐れたり、侮辱を許さないものだ。 皆黙り、道を空け、麟が歩き、その後を追った。  
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