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黒き麒麟、麟に対して、不思議なヒトだと口々に言っていた。
それに対しても、麟は凛々しくも軽く微笑んでいた。
確かに最初の印象は、神らしく人試し、気に入れば、とんな奴でも愛情を示し、そして争いを好まん性格と感じた。
鳥居を越えた辺りで、
「そういえば、お主はなんと名だ?」
麟が男に名を聞いた。
「名乗るなは無い」
素っ気なく答える男だったが、
「名無し、では無さそうだが?
勝手に面白おかしい名をつけても良いが?」
ニヤニヤと笑って、明らかに笑いが常に起きる名を考えていると分かり、男は結局折れ、
「ハァ……総十だ。変な名で呼ぶなよ」
名を総十と言った。
「総十、なかなか面白い名だ」
結果的には笑われ、総十は心の隅で恥をかいた気分だ。
「総十様、とても素敵ななですね」
かよはそう言うが、
「お世辞はいい!」
総十にとっては、お世辞にしか、聞こえなかったが、かよは、総十の手を握り、
「いえ、本当に素敵ですよ、総十様」
笑顔で言った。
さすがに総十も照れるが、笑って返してやった。
そうして、何故か出て行こうにも、土鬼がかよから離れたがらず、かよも土鬼を気に入り、半分諦めた形で、いつの間にか住み着く形へとなり、金欠になりやすい村に金銭を運ぶため、頭狩りは相変わらずだったが、基本的にはここの近くで戦する連中が、ここまで近付かせない為にやっていた。
一部は理解しなくてもいいし、金がなければどうやって必需品を買うのか見物と思っていたが、麟は常にそこまでは要らない、お前の稼ぎと言い、どうして責めないのか聞けば、
「愚問過ぎるな、神は人の争いなぞ、手を出さない」
コレだった。
戦神だっているだろうと言えば、居ても、手は出さないのが普通と言っていた。
もし、手を出すとしたらどんな奴だと聞いたら、笑いはするが、
「大切なものを傷付けた者に対して、罪を与える」
寂しげな声で語っていた。
それが、昨日の帰り道の事だ。
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