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そうして、今日の夜、単純な結界を土鬼が破壊したのか、一気に砕け散る音が聞こえた。
「皆、行くぞ! すぐさま火を消せ!」
麟の指示により、男衆は火をこれ以上広げまいと、水を掛ける。
だが、妙な違和感を感じた。
『微量だが邪気かこれ?』
総十は麟に気付かれないように、そっと動いた。
別に動いたって構わないが、麟の事だ。自分から率先して動いてしまう癖がある。
神だから仕方がない気もするが、たまには先に行ってみてやってもいいかと、邪気を辿った。
多分、気付かれてはいるのは知っている。
そこで、総十は、誰にも聞こえない声で、
「土鬼、先に行ってみて来い」
土鬼に指示して、どうなっているのか確認させることにした。
ある程度歩いていると、泣いている声が聞こえてきた。
まだやっと聞こえる程度という感じで、周りの火を消すための声がかき消してしまう。
それでも、どんどん歩いていく、きっと声の主がその先にいる。
徐々に聞こえてきた泣き声はまだ成長して間もない子供の様だ。
言葉は外の言葉だろうか。何言っているのか分からないが、どうやら誰かが怪我をして、必死に叫んでいた。
何かに巻き込まれ、親でも結界の中で何かにやられてしまったんだろうなと感じた時、
「もっぎゅ!」
土鬼が出てきて、何か口に加えてきた。
それを手に取り、
「刀の刃か?」
どこかで決闘でもしていたのか、欠けた刃だった。
まだ聞こえる泣き声を追う事にし、土鬼に、
「お前の行った先まで連れて行ってくれ」
命令した後、土鬼の上に乗って早く着くことを優先した。
どうせ、また山賊にでも襲われたんだろうとか思うが、この単純な結界だ。
きっと、何か特別な物を持っていて、それを奪うために襲う事も、この時代まだ呪を使い、閉じ込めた後、ゆっくりと痛めつけるなんて、多々あった。
着いたのが、凄い火の中で、
「土鬼、土や湿った木を使って火を消せ」
乗っていた土鬼から降り、土鬼に命令し、火の中で泣き続ける声の主を探し始めた。
そして、声の主を見つけ出した。
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