華麗なる幕開け

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――春の匂いがする。 玄関を一歩出たときそう思った。 見上げる空はどこまでも澄んでその青さが目に痛い。 真新しいのは初めて袖を通した制服だけじゃない。 少し強めに制服のスカートを揺らす風までもが、新しい世界へとあたしの背中を押す。 春ってだけでどうしてこんなに気持ちはふわふわするんだろう。 期待にも似たそわそわと浮ついた気持ちがあたしを落ち着かなくさせる。 期待よりも不安の方が大きいけれど、それは戦に出かける前の武士と同じなんだって自分に言い聞かせる。 つまりこれは武者奮いってヤツだ。
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