華麗なる幕開け

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ヨシ、と自分に気合を入れて門をくぐろうとすると、 「風花(ふうか)!」 玄関のドアが勢いよく開く音がして、お母さんがあたしを呼び止める。 もう、せっかく勢いつけて踏み出したところだったのに。 「なにー」 少し唇を尖らせてダルそうな声で振り返ると、カメラを持ったお母さんがドアを全開に開いてにっこりと微笑んで立っていた。 「写真。撮ってあげる」 「えぇー。いいよう」 「ダメ。入学式もついて行かせてくれないんだからせめて門の前で写真撮ろ? 時間まだあるでしょ?」 時間はある。 だけどそれは初めての高校までの道のりで迷子になったり、電車に乗り間違ったり、不測の事態に備えての余裕なのに。
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