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テーブルをガードがわりにミスティは、被弾することなく、銃を突きつける連中の元へと辿り着いた。
そして、そのまま容赦なく、敵をまるで芝刈り機の如く斬殺していった。
銃を持っていてもミスティが間合いに入ってしまったら、もはや何の役にも立たない。即座に三人が斬って落とされた。
その遺体を今度は防弾がわりに、素手で襲いかかってきた相手をミスティは蹴とばした。
転がった男を踏み越えて、銃撃部隊のすぐ後ろに控えていた男がミスティ目掛けて襲い掛かった。
「この小娘がああツ!!」
一際ガタイのいいムキムキマッチョな男。これは、バーディが得意とする相手である。
「ハニー! 避けろ!」
ミスティがワンステップで後方へ飛び退いたところへ、すかさずバーディが相手の顔面に目掛けてヘッドバッドを打ち付けた。
そして、痛みで相手が顔を抑えた隙をついてマチェーテで頭から胴体部まで薪でも割るかのごとく撫で斬りにしてしまった。中途半端にくっついた不自然な身体を思い切り外へ目掛けて蹴飛ばした。
外にもまだまだそれなりに人員はいるが、無残な姿になった構成員とバーディを交互に見ながら、はっきりと戦意喪失しているのがわかった。
「こいつもくれてやれ」
いつの間にかバーディの横に舞い戻ったミスティが、手榴弾を手渡してくれる。
「お、サンキュー」
まるで夕ご飯で、調味料の受け渡しでもしているかのような錯覚を覚えるほど手馴れた様子で手榴弾を受け取ったバーディは導線を引き抜いき、眼下にたむろするアバスファミリーの連中に目掛けて投げつける。
そして、再び広がる爆音と業火。
その様子をバーディとミスティは見向きもせずに踵を返すのであった。
「いやー久しぶりに動くと、体が鈍ってんのよくわかるねえ」
店内へ戻ると、あちこちに銃痕は残っているが、それなりに綺麗な形を保っている。
お店の外観をオシャレなものとしていた、ガラス張りのファサードは全壊だけども。
「ミスティ。怪我はないか?」
「こんなんでケガするほどなまっちゃいない」
「それもそーね。問題は・・・ジルさんの心のケアかな?」
バーディたちはジルのそばへと寄って行った。困ったことには、ジルが今度は放心状態になっている。
「おーい、ジルさん? 大丈夫か?」
「私のレストラン・・・。殺人現場・・・。ジェノサイド・・・。ハハハ・・・」
ジルは心身喪失の状態となっていた。
「無理もねえよ。お前ら、ムチャクチャやりやがって」
「半分以上、お義父さんのせいですからね。ちゃんと報告・連絡・相談してください。そーゆーところですよ。死因は」
「スイマセン・・・」
そもそも死んでいるのだから、報告連絡相談の使用もないのだが、ミスティにはそんな言い訳は通用しない。
19歳に怒られる、享年53歳。なんともシュールな絵面である。
ファミリーの言葉を尻目に、ジルは呟いた。
「私はもしかしてトンデモナイ子たちを採用しようとしてるんじゃないかと・・・」
「もちろん、ここまで来て、引くことはできんぜ?」などとハーミルは追い討ちをかける。
ジルは結構な不幸呼び込み体質なのかもしれない、とバーディは他人事のように思ってしまった。
そうでもなければ父親とも俺たちとも出会うなんてことはなかったろう。
「ただ、分かったろ。コイツらなら、間違いなくジルちゃんの仕事には役に立つはずだぜ?」
ハーミルはバーディとミスティの肩に手を回した。
「確かにね・・・。でも、先が思いやられるよ」
ジルは力ない笑顔を浮かべた。
「大丈夫だって。俺たちだって基本的には平和主義者なんだから。襲われさえしなきゃ、至って普通の家族さ。なあ、ハニー?」
そういって妻に同意を求めるが、その妻は刀についた血を、倒れた男の身ぐるみ剥がして拭き取るのに執心していた。
ジルは、さらに嘆息した。
そんなすったもんだがありながらも、バーディ達はジルと無事契約を結んだ。ジルの手がプルプルと震えているのは忘れられない。
バーディたちは、そのままアバドンホールへと移住することになった。
絶対に喧嘩を売ってはいけないバニングスファミリーがこれから何の仕事をするのか。それについては、これから語っていくこととしよう。
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