異世界

6/6
前へ
/10ページ
次へ
「さて、まずは何から話始めようか?…そうそう、君がこの世界に飛ばされた理由だったね。君はこの世界に飛ばされたのではなく招かれたんだよ。」 マスターが空っぽのティーカップの上で指をパチンっと鳴らすと、ティーカップはピンクの飲み物で満たされた。 もう一度指をパチンっと鳴らすと、今度はマカロンと美味しそうなお菓子の山が現れた。 (不思議…。) 「そんなに不思議かい?君にも出来るはずだよ。簡単なことさ。頭の中で想像して、強く願うんだ。こんな風に…!」 マスターは話し終わると同時にまた指をパチンっと鳴らした。 すると私の座ってた椅子が大きなピンクの羊に変わった。 「すごい…。私にも出来るの? 」 「君にもできるはずさ。君が本物のリコならね。」 「……本物?」 その瞬間、羊が急に暴れ出し私は振り落とされ尻もちをついた。 「痛っ! 」 「失礼。すぐに元に戻すから。 」 マスターはクスッと笑うと、また指をパチンと鳴らすと羊は椅子に戻った。 何度見ても不思議だ。 「さて、君が座り直したら話を再開しよう。……おやっ、君の手にある物は何かね?良かったら私に見せてはくれないだろうか?」 どうやらマスターは私の持っている携帯を言っているらしい。 私は立ち上がり、軽く服に着いたホコリを払って椅子に座り直した。 「どうぞっ!」 羊から落とされ、不機嫌になった私はテーブルの上に叩きつけるように携帯を置いた。 そんな気持ちもお構い無しにマスターは携帯を手に取ると、派手な化粧とは裏腹に真剣な声で話し始めた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加