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「さて、まずは何から話始めようか?…そうそう、君がこの世界に飛ばされた理由だったね。君はこの世界に飛ばされたのではなく招かれたんだよ。」
マスターが空っぽのティーカップの上で指をパチンっと鳴らすと、ティーカップはピンクの飲み物で満たされた。
もう一度指をパチンっと鳴らすと、今度はマカロンと美味しそうなお菓子の山が現れた。
(不思議…。)
「そんなに不思議かい?君にも出来るはずだよ。簡単なことさ。頭の中で想像して、強く願うんだ。こんな風に…!」
マスターは話し終わると同時にまた指をパチンっと鳴らした。
すると私の座ってた椅子が大きなピンクの羊に変わった。
「すごい…。私にも出来るの? 」
「君にもできるはずさ。君が本物のリコならね。」
「……本物?」
その瞬間、羊が急に暴れ出し私は振り落とされ尻もちをついた。
「痛っ! 」
「失礼。すぐに元に戻すから。 」
マスターはクスッと笑うと、また指をパチンと鳴らすと羊は椅子に戻った。
何度見ても不思議だ。
「さて、君が座り直したら話を再開しよう。……おやっ、君の手にある物は何かね?良かったら私に見せてはくれないだろうか?」
どうやらマスターは私の持っている携帯を言っているらしい。
私は立ち上がり、軽く服に着いたホコリを払って椅子に座り直した。
「どうぞっ!」
羊から落とされ、不機嫌になった私はテーブルの上に叩きつけるように携帯を置いた。
そんな気持ちもお構い無しにマスターは携帯を手に取ると、派手な化粧とは裏腹に真剣な声で話し始めた。
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