異世界

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「やぁ、お待たせ。大丈夫かい?」 静寂を破る陽気な声が後ろから聞こえてきた。 振り返って見ると、ピエロの様な派手なメイクをして、色とりどりの衣装を身に着けた長身で細身の男が立っていた。 私が驚いて何も言えずに見ていると、フルールが嬉しそうに羽をパタパタさせて、男のほうに近づいていった。 「マスタァーー!待っていたんですよ!遅いですってばぁー…。」 マスターの登場で安心したのか、フルールのが目が少し潤んでいる様に私は見えた。 「フルール。君は全くわかっていない。私はあくまでも傍観者。中立な立場。正義の味方ってわけではない、と君に何回話したら分かってくれるのだね?」 「…でも、マスター。また人間が飛ばされて来たみたいだから、一人では心細くて。…またあの子達みたいに、壊されちゃったらと思うとなんだか怖くて…。」 「フルール!!」 マスターはフルールを嗜めるように睨みつけると、今度は私の方を見て微笑んだ。 (なんだか薄気味悪い。なにこの人?!この人がマスターなの?) 「いかにも。私がマスターと呼ばれるもの。この世界の傍観者で、この世界の秩序を司る者だ…。私が薄気味悪いとはっ!……嘆かわしい。人を見かけだけで判断するようでは、この世界では命取りになるぞ。」 「ごめんなさい。」 ピエロのような化粧で分からなかったが、マスターは真っ直ぐな目で私を見ている。 (恥ずかしいよ。……えっ?でも待って。私、今……言葉には出してなかったはずなのに。どうしてわかったの?) 「どうしてかって?君もずいぶん無粋な事を聞くんだね。いいだろう。教えてあげよう。その前に、君がこの世界に飛ばされた理由を聞きたくないかい?」 マスターはいつの間にか私の前に来て、手をパンっと叩くと手品の様に色とりどりのハト達が一斉に飛び出し、クルクルと渦を巻くように集りテーブルとティーセットに変わった。 「話は長くなる。どうぞ、レディ。アフタヌーンティーでもしながら私の話に付き合ってくれるかい?」 フルールがイスをひいてエスコートしてくれた。 そして私はマスターの話を聞く為に、ゆっくりイスに腰を下ろした。
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