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何十発もの銃声が、至る場所から立て続けに戦いの始まりを告げた。
右から聞こえたかと思えば、左から。ありとあらゆる場所から耳につく重く、乾いた音。頭で鳴り響く警鐘音が、緊張をさらに強める。
俺はその音の中を、一心不乱に駆け回っていた。
周り一面は緑葉の木々で覆われ、見通しが悪い。その上、この四方八方からの銃声だ。嫌でも集中力を削がれてしまう。
それでも俺は、木々の周りを必死に走り回り、隠れられそうな場所をくまなく探していった。
しかし、いっこうに見つからない。
否応なしに届く銃声は、さらに激化するばかりだった。
思わず木々に向かって悪態を吐きたいくらいなのだが、そんな時間も余裕もない。
いつも安心感を与えてくれる林は、今この時だけは俺の神経を逆立てる要因の1つにもなっていたのだから。
とりあえず探せるだけ走りまくって、結局俺は古い塀が建ち並ぶ、雑木林の際奥まで行き着いてしまう。
高さは、俺の身長の少し上ぐらい。普通の男なら、余裕で跳び越えられる高さだ。
確か、元は国境代わりとして使用されていたと、歴史書に綴られていたことを思い出す。
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