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「――狐狗狸さん、狐狗狸さん……どうぞおいでください……」
「――狐狗狸さん、狐狗狸さん、どうぞおいでください……もしおいでになられましたら『はい』へお進みください……」
暗闇に閉ざされた部屋。
真っ赤な月の微かな光が部屋を浮き上がらせている。
少女は一人、机に向かって俯いていた。
髪は乱れ、身に付けた制服は汚れ引き裂かれている。
机の上には白い和紙。
上部に『はい』と『いいえ』の文字が書かれ、間には鳥居が血で赤黒く描かれている。
鳥居の下には五十音順とアルファベット、それに数字が規則正しく書き込まれていた。
――『ヴィジャ盤』と呼ばれるものだ。
少女はヴィジャ盤に置かれたコインに人指し指を置きながら、再び呪いを唱えた。
すると、コインが滑るように『はい』に動いて止まる。
少女は仄暗い部屋で邪な笑みを浮かべた。
「狐狗狸さん、狐狗狸さん……あなたは人を呪うことができますか?」
少女の問いに、コインは滑るように進んで答えた。
『できます』
「……どうすればいいの? 教えて」
少女の言葉に、コインが再び滑る。それが示した言葉に、少女は肩を震わせて笑った。
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