未名月ゼミによる考察

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「何だ、その人払いって」 「勇さんは二年前に奥さんを亡くし、今は息子さん二人と娘さん一人の四人で麻賀津神社の社務所兼住宅に住んでいたんだが昨日の朝三人の子供たちに敬一郎さんと会うから夜は何処かに泊まり、今日つまり次の日まで絶対帰って来るなと厳命したそうなんだ」 「よく知っているな」と北沢。 「時也さんが駐在さんに聞いた事を教えてもらってさ」 「君はそんな事まで時也さんに聞いていたのか」未名月が苦言を呈(てい)した。阿東は誤魔化すように「それよりも昨日はデモをしなかった事と神社に来た人がいない事から、息子さんたちが家を出てから勇さんが亡くなるまでの足取りが全くわからないそうです。それから、勇さんの胸に刺さっていた日本刀は、勇さんが床の間に飾っていたお気に入りの物で、この辺りの人は皆知っていたそうです」と、勢いよく大きな声で話した。 「床の間にあった日本刀が持ち出されているという事は、犯人は社務所の中に入ったという事でしょうか」と岡田が疑問に思う点をあげた。未名月は「そうとは限らない」と答えた。
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