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「最後のくだりおかしくなってんぞ。てか温泉行きゃどこでも知らない客と入るだろ」
「だって普段はスーツ姿で顔付き合わせてるちょっとした顔見知りみたいな連中と入るわけだろ、たわいない会話をする振りをしながら、実はそうかスーツを脱ぐとこんないやらしい身体をしているのか香取君は、なんて舐めるように全身を観察されてしまうに決まってるよ!」
こいつは時々本当にわけのわからねぇ事を言う。頭が良すぎるとネジが一本外れてしまったりするのだろうか。
「お前な……いっぺんしんでそのおかしな思考回路を正常化させてこいよ。大体オッサンばっかりだっつーの」
「中年に舐め回される方がむしろ危険だ……! 勢い余って何をしでかすかわかったもんじゃない」
「アホか。とにかく温泉旅行っていっても仕事の一環なんだし、文句言うな」
こたつでみかんを剥きながらピシャリと言い放つと、ハルもみかんの山からひとつ手に取り、黙って剥きはじめる。俯いた表情はもう不満ギュウギュウだ。
「ほらハル、食え」
顔をあげたハルの口に、剥いたばかりのみかんを押し込むと、モグモグしながら少し笑顔になってきた。
よしよし。
するとハルも自分で剥いたみかんを俺の口へと押し込み、と同時に唇を重ね合わせた。
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