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夕方のうちに一度湯につかり、部屋に用意された夕食を満喫し、さらに楽しみにしていた芸人王者決定戦も大満足の結果で、仲居さんが敷いてくれた布団の上でゴロゴロ満喫していると、ハルに「起きて」と声をかけられた。
「省吾、お風呂の時間だよ。行こう」
本日一番のウキウキっぷりなハルに急かされ、渋々タオルを手に立ち上がる。
夕方に大浴場を満喫したし、ぶっちゃけこのまま寝てしまいたい。
とは口が裂けても言えない状況、ルンルンなハルの後について貸切露天風呂を目指す。
まあ、夕方入った風呂とはまた景色が違う、というのは楽しみだ。
貸切りって位なら狭い風呂なんだろうなと思い込んでいた俺の予想は、遥かに裏切られた。
「わあ、これは良いな」
ハルが嬉しそうな声を上げる。
十名はゆったりとくつろげそうな広さの岩風呂。その前方景色は雪に覆われた雪山の斜面が広がり、月明かりに照らされた斜面はうっすらと青白く輝いている。幻想的な空間に、はあと大きく息を吐いた。
でも、それよりも。
「省吾、月が綺麗だね」
腰から上を湯から出し、岩辺に腰掛けるハルの身体は月明かりに照らされて、まるで雪のように白く、輝いて見える。
綺麗だなと、思った。
俺は言葉を出せず、ただ、ハルを見つめた。
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