雪と蝶(社会人四年目:忘年会シーズン)

8/11
前へ
/146ページ
次へ
「省吾? どうした」  ハルの声でハッと我に返る。見惚れていたと気付いた途端、恥ずかしくなって目を逸らした。 「いや、お前の肌が白いなあと思ってさ」 「ああ、子供の頃は嫌だったけどね」 「そうなのか?」 「日焼けしても赤くなるだけで黒くならなかったし、色白でからかわれたりしたし」  そんな昔があったのかと少し驚く。だからこいつ、剣道やら弓道やら、身体を鍛えたんだろうか。 「だから嫌だった」 「そうか、綺麗だぞ」 「綺麗? 男を褒める言葉じゃないよ」  ハルが笑う。 「そか、でもお前の肌、綺麗だし俺は好きだけど」  思ったままを言葉にすると、突然ザバンと湯に浸かったハルが目の前にやってきた。 「わ、何だよ怒ったのか」  やる気かと身構えた瞬間、両頬を包まれキスをされた。舌と舌を絡め合い、唇を離してもすぐに再び重なり合う。  月明かりの下で、ハルと俺は何度もキスを繰り返した。 「……誰かに見られたらどうすんだ」 「貸し切りだよ」 「どこから見られるかわかんねーだろ」 「じゃ見せたらいいよ」  月明かりの下で、ハルが微笑んだ。  ああ。  やっぱり好きだなと思えば嬉しくて、俺も頬を緩めて笑った。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1730人が本棚に入れています
本棚に追加