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月明かりに照らされた真っ白な雪を眺め、それから隣で同じ景色を眺め嬉しそうに酒を飲む恋人へと視線を移し、頬が緩む。
あのニ匹の蝶みたいに、寒い冬でもハルと一緒なら俺はきっとどこまでも飛んでいけそうだな、と思ったら笑いが込み上げてきた。
どうした俺、そんな詩人みたいな事考える人間じゃねぇだろう。
「省吾、気持ち悪いよ?」
突然笑い出した俺を心配そうな表情で見つめるハル。
「ハルにやられてんなと思ったら笑えただけ」
「なんだ、今更だな」
目を細めてふわりと微笑むハルを、あの蝶のように綺麗だと思った。
でもハルは幻じゃない。
そう思えたら嬉しくてたまらなくなった。
『今更』
さらりと言える程、もう長い時間を一緒に過ごして来たんだな。
なのに想いは増えるばかりで減らないものだなと改めて思い、それを幸せだと感じる。
「ハル」
「うん」
「俺はもうお前のもんでいいからさ」
「うん?」
「一緒にいてな」
<終>
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