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一瞬、驚きに目を見張ったティアだが、すぐに微笑を浮かべた。
「へぇ~。シンジって意外と博識なんだね」
("意外と"は余計だ)
文句は心の中だけにしておいた。ちょうど咳き込み、吐血してしまったからだ。
「そうだな~……じゃあ出血大サービスで教えちゃおう。私の能力の一つ」
血ぃ出してるのはシンジだけど、などと冗談めかして言うが、その快活さの奥に暗い何かが潜んでいるのを、慎士は見逃さなかった。
「結論から言うと、私のは『循環強化』じゃないよ。血管は使ってないし」
語りながら、再び謎のラインを浮かべるティア。薄く煌めく橙は、暗い店内では非常に目立つ。
「私の体にはね、血管や神経とは別に、肉体強化専用の魔力伝達経路が備わってるの。
これのおかげで、私は効率よく魔力を行き来させて、運動神経や再生能力を高められるってわけ」
手のひらを大きく開いて、こちらに見せつける。
【焦熱鉄鎖】を掴み、焼けてしまったはずの皮膚組織は、火傷の跡も残さず元通りになっていた。
「強引に名前をつけるなら、『擬似循環強化』って感じ?」
「……なるほどな」
あの橙色は、専用経路とやらを巡る魔力だったというわけだ。
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