3章

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一瞬、驚きに目を見張ったティアだが、すぐに微笑を浮かべた。 「へぇ~。シンジって意外と博識なんだね」 ("意外と"は余計だ) 文句は心の中だけにしておいた。ちょうど咳き込み、吐血してしまったからだ。 「そうだな~……じゃあ出血大サービスで教えちゃおう。私の能力の一つ」 血ぃ出してるのはシンジだけど、などと冗談めかして言うが、その快活さの奥に暗い何かが潜んでいるのを、慎士は見逃さなかった。 「結論から言うと、私のは『循環強化』じゃないよ。血管は使ってないし」 語りながら、再び謎のラインを浮かべるティア。薄く煌めく橙は、暗い店内では非常に目立つ。 「私の体にはね、血管や神経とは別に、肉体強化専用の魔力伝達経路が備わってるの。 これのおかげで、私は効率よく魔力を行き来させて、運動神経や再生能力を高められるってわけ」 手のひらを大きく開いて、こちらに見せつける。 【焦熱鉄鎖】を掴み、焼けてしまったはずの皮膚組織は、火傷の跡も残さず元通りになっていた。 「強引に名前をつけるなら、『擬似循環強化』って感じ?」 「……なるほどな」 あの橙色は、専用経路とやらを巡る魔力だったというわけだ。
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