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予備電源による照明は、薄暗い。
しかし、混乱のるつぼと化した教室で、そんなことを気にする者はいなかった。
「何だよ、あの塔……それに変な森まで……!」
「ていうか、あり得るの? あんなスゴい魔力反応……」
「おい、電話繋がんねぇぞ! どうなってんだ!?」
「あの塔が建ってるの、中心街の辺りよね……ビル、全部なくなってない?」
「出てよ、お父さんッ……お願いだから出てよ!」
「お母さん! いやァァァ!」
突如として街を包んだ森と、中心のビル街を変貌させた塔。二つの出現に、生徒たちは完全にパニックに陥っていた。
しきりに電話をかける者。呆然と窓の外を眺める者。早くも最悪の事態を予見し、泣き叫ぶ者。
一年E組に限った話ではない。窓や廊下からも、他のクラスのざわめきが届いていた。
一時間目・薬草学担当の教員も、生徒の騒ぎを止められず、慌てふためくばかりだ。
「……」
木宮 蓮は、それらを冷徹に見つめていた。
彼も驚いている。本格的に仕事に行く、と言った父のことも気がかりだ。
しかし、彼が簡単に倒れるとは思えないし、他に知り合いが巻き込まれている可能性も低いので、常の冷静さは保てていた。
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