1章

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決まりが悪くて目を逸らすと、ショートカットの少女も力なくうつむく。 多少緩んだとはいえ、手の震えは収まらない。 「……」 彼女の両親が、法事で県外へ行ったことは、一緒に寮を出た時に聞いた。大学生の姉も大丈夫だろう。 桜田が震えるほど心配しているのは、公立中学校に通っているという、妹だ。 学校そのものは、中心街から一歩離れた場所にあるものの、危険じゃないとは言い切れない。 ましてや、街は真っ暗なのだ。謎の塔自らが光を放っているとはいえ、ほとんど夜と変わるまい。 「……」 窓を見る。中よりも外の方が暗いため、妖しい輝きを放つ塔しか視認できない。 街の様子は分からないが、木宮の胸には、とてつもなく嫌な予感が充満していた。 あの塔や森を生んだ魔術は、桜峰市を変貌させて市民を閉じ込める、それだけが目的なのだろうか。 (もちろん、ノーだ) 心中で即答する。 あれほど強大な反応の後にそれでは、アンバランスも甚だしい。さらに別の意味もあるはずだ。 ちらちらと桜田の顔色を窺いつつ、様々な可能性を考える。
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