1章

6/43
前へ
/639ページ
次へ
静まり返った教室で、木宮がおもむろに立ち上がる。 「あ、えっと、木宮君。なるべく動かないでくれると……」 「理事長は、教室から出なければ何をしても構わないとおっしゃいました」 止めようとする中年教師を一蹴して、重苦しい空気をかき分けるように、慎士に近づいた。 電話番号の他に、複数のウィンドウが新たに開かれている。インターネットへの接続を試みているのだろう。 「どうだ」 小声で尋ねる。彼は肩をすくめ、ため息で答えた。 「ダメだ。電話もネットも繋がんねぇ」 「……そうか」 「街の外と連絡とれねぇのは想像できてたけど、中同士でも繋がんねぇとはな……あの塔、まさか電波妨害するだけのショボい術じゃねぇよな?」 「心当たりは?」 「……ないわけじゃない。正直、当たってほしくねぇけど」 短い問いかけに、いっそう声色が低くなる。 「禁術かも」 「……そのことを、どこで?」 禁術に認定された魔術は、その内容から名称に至るまで、あらゆる情報が破棄・隠蔽された。 いくら慎士といえど、ほぼ残っていない、あるいは国家規模でガードされた情報を調べられるとは思えない。
/639ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51549人が本棚に入れています
本棚に追加