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木宮の問いかけに、慎士は一瞬、周りをはばかる素振りを見せてから、さらに低く言う。
「ちょっと前、理事長ん家のサーバーにハッキングしてみた時に、それっぽいデータを見つけたんだよ」
相手が慎士じゃなかったら、自首を勧めるところだった。
「あの人も、禁術が使われる可能性を考えて、情報収集してたみたいだ。
二条院家は王族じゃねぇから、あまり深くは調べられなかったようだけどな」
「それでも、人様の庭に土足で踏み込まなければ調べ物もできない、一介の庶民よりはマシだろう」
不意に、横から宍戸が割り込んできた。
雪のように白い髪の下には、真剣な顔がある。
「あの森や塔がどんな魔術か、分かっているのかい?」
「横から来といて偉そうにすんなっつーの。えっと……」
ぼやきながらメモ帳を取り出し、ページをめくる。
どうやら彼は、重要な情報は紙媒体で残す主義らしい。
「最初に出てきた森は、理事長の資料に類似のヤツがある。たぶんヴェッテンハイム家が管理してた禁術だ」
木宮の脳裏をよぎったのは、その一族が稼働させたばかりの、魔力供給所の存在だ。
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