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「確実に言えるのは、あの二つにタナトスが絡んでることと……」
手帳を閉じた少年は、ひときわ鋭い口調で、苦々しげに言う。
「ユーリなら、絶対あの塔を目指すだろう、ってことだけだ」
「……そうだな」
今日のE組の遅刻者──ユーリと葛西のことを思い出す。
大木の出現に巻き込まれたかもしれない葛西も心配だが、全ての決着を着けるべく、戦いに赴きそうなユーリの方が危険だ。
タナトスの牙城と呼ぶにふさわしい塔を見て、彼女がどう動くか。想像に難くない。
「……」
木宮も心配だ。ユーリはもちろん、桜田のことも。
家族想いの彼女のことだ。学校を抜け出し、妹の安否を確認しに行く算段を練っていても不思議ではない。
気持ちは理解できるため、止める気はない。しかし、一人で行かせるのは避けたかった。
「……何を考えているか、だいたい想像はつくけどね」
口をつぐむ級友二人に、宍戸がため息まじりに切り出す。
「どうやって街に出るつもりかな? 仮に結界を突破できたとしても、街の様子もろくに分からないままでは、かえって危険なだけだと思うが」
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