1章

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「確実に言えるのは、あの二つにタナトスが絡んでることと……」 手帳を閉じた少年は、ひときわ鋭い口調で、苦々しげに言う。 「ユーリなら、絶対あの塔を目指すだろう、ってことだけだ」 「……そうだな」 今日のE組の遅刻者──ユーリと葛西のことを思い出す。 大木の出現に巻き込まれたかもしれない葛西も心配だが、全ての決着を着けるべく、戦いに赴きそうなユーリの方が危険だ。 タナトスの牙城と呼ぶにふさわしい塔を見て、彼女がどう動くか。想像に難くない。 「……」 木宮も心配だ。ユーリはもちろん、桜田のことも。 家族想いの彼女のことだ。学校を抜け出し、妹の安否を確認しに行く算段を練っていても不思議ではない。 気持ちは理解できるため、止める気はない。しかし、一人で行かせるのは避けたかった。 「……何を考えているか、だいたい想像はつくけどね」 口をつぐむ級友二人に、宍戸がため息まじりに切り出す。 「どうやって街に出るつもりかな? 仮に結界を突破できたとしても、街の様子もろくに分からないままでは、かえって危険なだけだと思うが」
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