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さらさらと、背の低い草が風に揺れる。
オレこと神崎 鋼介の精神世界は、一本の巨木を中心に、どこまでも続く草原だ。
二ヶ月前にフェルムに呼び出された時は、地面の所々に走った亀裂が、底から暗紅色の光を立ち上らせていた。
が、今は至ってのどかな平原である。空は明るく、風も暖かい。
(つーか、何で草原なんだろうな……?)
今さらながら考えて、周りを見回す。
いつもオレの姿を借りて現れるフェルムが、今日は見当たらない。
早いトコ本契約を済ませたいんだが……まさかとは思うけど、まだ調子悪いのか?
制服に<ドラウプニル>という、普段と同じスタイルなのを確認していると、
『来たか』
どこからともなく、乱暴な口調で呼びかけられた。声はオレのものだ。
姿は見えないが、相変わらずオレの"体"を使っているようだ。
「よう。今日は出てこないのか?」
『契約を始める前に、一つ聞かせろ』
「……はい、どーぞ」
どんな風に声帯を使ったら、こんな威圧的な声になるのかねぇ。一度レクチャーしてほしいもんだ。
頭を掻いていると、フェルムは軽く咳払いしてから切り出した。
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