1章

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尋ねるのは、最も気になる人物の行方。 「時音は?」 「……どこにもいません。電話も通じなくなったんで、手の打ちようがないッスね」 「……そうか。ありがとう」 ありのままを答えてくれたことに感謝し、防衛プログラムを指で弄ぶ。 今のところ、学園や学生寮に異変はない。しかし、それも時間の問題だろうと、理事長は思った。 「これは、悪い方の予感が当たってしまったかな」 「……ホント、悪い方に転がってばかりッスねぇ、人生は」 「そう思うのは、悪いことの方が記憶や印象に残りやすいという、人の脳の特徴ゆえであって……うんちくはやめておこう」 口をつぐむ女性に、右京は苦い顔のまま。 「どうするつもりか知りませんけど、オレぁ行きますよ。時音がやられたんなら、ヤツと張り合えるのはオレかあんたしか……」 「やられてなんかいないさ。あの子は生きている」 力強い断言に、かつての教え子は目を丸くしたが、彼女は意に介さず、遠い目で続ける。 「生きて、どこかで戦っているよ」 無傷ではないかもしれないが、きっと大丈夫。 根拠なしに確信できるくらいには、彼女は時音を信頼しているのだ。
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